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南部せんべい“発祥の地”青森・八戸で廃業相次ぐ

大変です。

 

 南部地方を代表する菓子で、土産物としても人気の高い南部せんべい。発祥の地とされる青森県八戸市で製造業者の廃業が相次ぎ、“元祖”の味が岐路に立たされている。最盛期には市内だけで100店舗ほどあったと言われるが、現在は20店舗に満たず、業界団体の八戸煎餅組合(上舘一雄組合長)も事実上の休眠状態。家族経営の店が多く、企画力や営業力で市外の業者に水をあけられているのが現状で、「八戸せんべいの火が消えてしまう」と危機感を訴える関係者もいる。

 小麦粉と塩を水で練り、丸い鋳型で焼いた素朴な味わいの南部せんべいは、青森県南や岩手県北地域を中心に古くから食されてきた。シンプルな製法だけに、店ごとに味や歯触りの特徴があり、住民はそれぞれ好みの味を求め、親しんできた。

 かつては店頭での直売や個人商店での販売が中心で、一定の固定客を確保できていれば商売が成り立った。しかし、スーパーの台頭などで販売形態は大きく変化。大量生産で安く商品を納入できる市外の業者が攻勢を強めてきた。

 岩手県の業界団体が首都圏でPRに力を入れた影響もあり、「南部せんべいは岩手の名産」とのイメージが定着。「せんべい汁」ブームでおつゆせんべい需要が増えた部分もあるが、“発祥の地”は長く苦戦を強いられてきた。

 「家族で経営してきたが業績不振が続いていた。働く人もおらず続けられなかった」。数年前に店をたたんだ八戸市内のせんべい店の家族は取材に対し、廃業の理由をそう明かした。

 苦境を象徴するように、50年前は70店ほどあった組合の加盟店も激減し、稼働している店は現在9店のみ。主立った活動はなく、年1回の新聞広告も負担が大きいため、2018年を最後に取りやめる。

 上舘組合長は「解散も取り沙汰されたが、名前だけは残したい。108年続いてきた組合の歴史を途切れさせるのは忍びなく、将来若い人に引き継げたらいいのだが…」と力なく語った。

 発祥の地の足元が揺らいでいる現状に、危機感を感じている関係者は少なくない。市内のある菓子卸業者は「正直、商品の宣伝や企画力は岩手県や津軽、下北地方の業者が市内より上手。『発祥の地なのに…』という悔しさがあり、商品開発などに力を入れなければ」と指摘する。

 八戸市のまちづくり団体「八戸せんべい汁研究所」前所長で、“超ウルトラ主任研究員”の田村暢英さん(64)も「せんべい自体が消えたわけではないので消費者は意識していないが、市内の業者が減っているのは間違いない」と危機感を訴える。

 一方、せんべい汁ブームに前後し新規参入した事業者もいることから、チャンスは残されているとの見解を示す。

 「今ならまだ伝統を守りながら新商品を打ち出していくことができる」と強調し、“元祖”復活を強く願っていた。